柏市「地域包括ケアシステム」の構築と在宅医療と介護の連携について 視察報告
人口404,949人(166,231世帯) 高度経済成長を機に人口が増加し発展してきたまち。2030年に75歳以上人口が、2010年の2.17倍(全国1.61倍、千葉県2.02倍)になると推計されている。地域包括支援センターは委託の7か所。柏市立柏病院を運営。東京慈恵会医科大学附属柏病院(救急基幹センター)、国立がん研究センター東病院が市内にある。
1 柏市における長寿社会のまちづくりの取り組み「豊四季台プロジェクト」の実践
豊四季台団地には、1964年度から103棟(4,666戸)の公団が建てられ、当時は約1万人が住み、現在は約6千人。2004年から少しずつ建替え、約10年かけてエレベーター化を進めている。高齢化率41%となる豊四季台団地では、要介護者が本来なら15%程度いる見込みだが10%と低く、住み続けたくとも施設または他地域へ転住するなど、介護が必要な高齢者が住み続けられない状況にあった。そこで、2009年6月に柏市・東京大学・UR都市機構の三者で「柏市豊四季台地域高齢社会総合研究会」を発足させ、いつまでも在宅で安心した生活が送れるまち、いつまでも元気で活躍できるまちを方針として実現することとした。そのために二つの取り組みを進めることとした。一つ目は地域包括ケアシステムの具現化、二つ目は高齢者の生きがい就労の創成。ハードの整備(団地の建て替え)だけでなく、ソフト面での整備を合わせた「豊四季台プロジェクト」がスタート。長寿社会のまちづくりに向けて「在宅医療」と「生きがい就労」により、地域包括ケアシステムを具現化する取り組みが進められている。
2 在宅医療を推進するための具体的しくみと取組
柏市の病床利用率は85.1%で、全国平均(80.2%)、千葉県平均(76.3%)に比べて高くなっており病床不足が課題になっている。一方、自宅で療養したいと希望する市民の割合は平成20年には63.3%、半数以上が在宅療養を希望している現状があった。
在宅医療の推進にあたっては、住み慣れた地域(日常生活圏域)における生活に密着したサービスの整備や、訪問看護・ケアマネ・地域包括支援センター等の各種介護保険サービスとの連携調整については、広域的な都道府県ではなく市町村が主体性を持ち地域の医師会等と連携して取り組むことが必要と考え、平成22年から保健福祉部の介護保険部局に長寿社会のまちづくりに専属的に取り組む「福祉政策室」を設置し、平成24年から「在宅医療支援担当」を設置した。第5期介護保険事業計画(平成24年〜26年)において在宅医療の推進を位置付け、介護保険事業と一体的に整備する方針を示して取り組みを進めてきた。在宅医療を推進するために、柏市と医師会の協働による他職種を巻き込んだ関係づくり、市民への意識啓発を行っている。