自らの手でエネルギー転換を進めたドイツ・シェーナウの人々

府中で映画上映「シェーナウの想い」より

きっかけは、チェルノブイリ事故を受けて1,700キロ離れているまちの住民が動いたことから映画は始まる。ドイツでは、戦前から電力、ガス、温熱、水の供給は独占供給体制のもと進められていた。その独占体制に風穴をあけ、自分たちのまちの電力は自分たちで賄うことを決定し、供給する方向へと進ませた。

ネックになるのは、政府や議会との間に太いパイプを持つ権力をいかに崩すか、それは、住民たちが声を上げ、行動を起こすこと、そのひとつが、住民投票であった。同時に自然エネルギーを住民自らが作り出し、独占合同企業体に属するところからのエネルギーは買わない。脱原発運動を起こしながら賛同者を募り資金集めをし、自分たちで電力会社EWSを稼働させた。丁度20年ごとに国がエネルギー会社を変える時期にあたり、1998年にドイツでは全面的に自由化が進んだことも追い風であった。そして、ドイツの自治体で初めて脱原発を実現した街となり、今では、この街だけでなく全国の11万の消費者や事業者にエネルギーを供給する代表的なエコ電力供給会社に成長しているとのこと。

Ⅱ部では、弁護士でもある千葉恒久さんからドイツの再生可能エネルギー法などのエネルギー政策や転換に向けた市民や自治体の取り組みについてお話を伺った。シェーナウの活動がドイツ全国に広がり、あちらこちらで住民投票が盛んに行われてきている。議会で決められたことに対して反論したい場合には、すぐに住民投票制度を使うことができるしくみがあることからでもある。

東京電力・福島第一原子力発電所の事故からドイツでは、事故の4日目に脱原発を進めることを首相が打ち出した。これまでの住民感情や運動が頂点に達したのを察知したことでもある。これまでの原発稼働延長策から現在はリストラや解体計画が進んでいるとのこと。大きな違いはもう一つ、ドイツの裁判官は「市民の権利を守るために働く」のが目的であるが、日本は「統治するための裁判官」と大きく意識に違いがあることも聞いた。

最後に、日本の再生エネルギー法には、まだまだ不備な点がある。20年間買い取ることを明言していないことや、優先的に必ず買い取ることを保障していないと千葉さんから聞く。

今後も、福島からの電気を使い続けてきた私たちこそが原発のない暮らしを実現し続ける責任があると沸念した。