文教委員視察その2:福山市立「ふくやま美術館」について

地域美術館のあり方として「コンビニ的な美術館」の発想

福山市人口47万人。「ふくやま美術館」は1988年11月に開館して22年になる。総事業費35.6億円 2010年予算額は約2億3,800万円(職員14名) 昨年度の来場者数は約18万1千人、21年間で美術館内各施設総合計約500万人来場。運営は(財)ふくやま芸術文化振興財団(写真奥の福山駅前文化エリア内に美術館等がある。財団はこの福山城博物館の運営も行う)

館内での所蔵品常設展として、近くの周南市で急逝した岸田劉生の「麗子十六歳之蔵」と「静物」、鞆の浦を題材にした絵画数点を観賞した。

運営方針のトップは、地域に根ざした美術館。
2.世界に向かって開かれた窓としての美術館
3.現代を見据え次代を先取りする美術館
4.美術と人間にふれあう美術館
美術品収集方針は、
1.福山市、府中市(広島県)、神石高原町圏域内関連作家の作品
2.瀬戸内圏関連作家の作品
3.日本の近・現代美術の作品
4.イタリアを中心とする近・現代ヨーロッパ美術の作品(東京都庭園美術館とも連携)
5.若手中堅作家で将来先導的役割が期待される作家の作品

指定管理事業で、メインとなる特別企画展(年2事業)・所蔵品展(年5回それぞれテーマを決める)、ギャラリー・版画室などの貸出、運営委員会開催、美術品管理、備品購入事業(美術関係図書資料購入)、美術品取得事業(美術品の購入) 所蔵数2264点(約半分は寄贈)
*指定管理事業内容は、市の運営方針に基づく展覧会等の開催、市の収集理念に基づく美術品取得。指定管理というけれど、前年度に企画をすべて決めてしまうので、次の年に変更や中止はありえない。市からの補助金年間約650万円。

自主事業では、集客数の見込める企画を考えて、特別企画展(年3事業)の開催 今年度「国宝の名刀」〜触ってみよう!刀剣〜として3万2千人来場、普及交流事業として、子ども美術館事業、移動美術展、実技講座・教室、所蔵作品写真撮影、団体育成事業がある。

苦労している点として、集客力としていかに目を引く広報・宣伝ができるか、ひとつの展覧会で100万円前後の広告費をかける。決め手はポスターイメージと聞く、商店街での広告、月一回の会合に参加アピール・タイアップする。お茶会が盛んで、各流派で前売り券を買ってくれる。ファミリー券、学校団体観賞の機会を春と秋にもつ(小中学生に対してバスの団体利用を考えている)

よい収蔵庫を持つことが課題となっている。収蔵品が増えてきたので収蔵庫を広げること、美術館のメンテナンスの維持、収蔵庫がよければ寄贈所蔵品にも期待できる。

3代目館長の中野正樹氏(6月に亡くなったばかり)が「コンビニ的な美術館」を提唱した。地域の文化活動にこまめに対応できる地方文化センター的役割をもつ必要性を唱える。機動的にニーズに対応すること、小さなイベントをたくさん行うことなどで移動美術館、出前美術館、作品貸し出す「アウトリーチ事業」が位置づけられている。