特養ホームから在宅復帰をめざす「在宅・入所相互利用」制度

『せたがや介護の日』の一日イベントに参加

午前の基調講演では、世田谷区地域包括支援センター運営協議会会長でもある、和田敏明氏から話を聞く。高齢者の一人暮らしの長期化が進む中、孤立させないよう見守れる社会づくりが必要で、生活の見える圏域でいかにつながりをつくるかがとても重要。そのためにも何かのサービスにつなげ、受けることを進めているという世田谷区。制度の狭間で苦しんでいる人、セーフティネットが働かない状態の人、一時的に要支援の状態にある人に対しては、「新たな公」の創出が必要となる。ほっておけない・見ていられない・何とかできないかの視点を多くの人が持つことが大事であると話を聞く。

 午後のシンポジウムでは、以前から聞いていた介護保険制度にある「在宅・入所相互利用」の事例を聞くことが出来た。特養ホームのおむつはずし運動に長年かかわってきた竹内孝仁氏が、コーディネーター。発表者の職員が勤める特養では、日中おむつをされている方が、2割とのこと。介護力が見える数字だ。高齢者夫婦で支えあって暮らしてきたが、どちらかが具合が悪くなるといっしょに暮らすことがむずかしい場合がでてくる。一時的に特養に入所し、水分・栄養管理、運動機能向上、生活リズムの回復を目指すことで、在宅復帰ができた例を聞く。冒頭から制度上では、特養は「終のすみか」ではなく、通過型の在宅生活を支援するための施設で、施設職員自ら「在宅復帰」意識が薄いことを指摘された。

 介護職の人件費アップをすれば、介護保険料は上がるかに対して、竹内氏は、施設の役割を再認識し、先の意識を持ってその人らしい生活を支援し、質のいい介護をすることで、その分を人件費に回すことが出来ると力説。おむつはずしで、環境にも負荷をかけないで済むとさらに納得である。