オーストラリアの高齢者福祉を視る ①

家族介護から施設介護、その後在宅支援を目指す政策転換へ

 10月18日から26日まで、生活クラブ運動グループの方たちとクイーンズランド州ゴールドコースト市にて、高齢者施設の見学や近年の在宅支援施策を学ぶ機会を持つことができた。
 オーストラリアでは、1950年代頃までは、高齢者の介護は家族の責任とされ、生活困窮高齢者に対しての公的扶助だった。家族以外では、民間非営利の慈善的諸団体に大きく依存されていた。長期ケアを必要とする人には、ナーシングホームの利用が開かれたが、民間保険に加入しない場合は、取り残される現状があった。
 1960年代になると、介護施設での介護が一般的になり、経済も上向きになり政策を進めることにより、整備も進み、誰もが入所できるようになった。さらにホステル(軽度介護付き住宅)も加え、施設の運営や処遇費に高齢者福祉の国家予算の90%が使われ、施設介護の予算はさらに膨らんだ。
 このような中、北欧同様に広がってきた施設介護型から、できるだけ自分の家に住み続け、地域社会の中で生活し、在宅生活の中でサービスを受けられることが、これまでの生活が守られ、人権の観点からも好ましいと言う考え方が広まった。
 オーストラリアにおいても、少子高齢社会に備えた恒久的かつ抜本的な高齢者ケアのあり方が、国や関係者の中で本格的に検討されることになり、福祉と経済の両立を図るために「中福祉・中負担」の確立を目指すことになった。