自治研主催「自治体病院のあり方と都立病院改革」学習会に参加して

社会保障費の自然増を毎年2,200億円圧縮、小泉内閣の「聖域なき削減」の現状は・・・

 医療費総額の伸びの抑制、特に高齢化に伴って医療費の伸びを抑制するために2001年に考えられた骨太答申では、「医療の質」を落とさずに、コストを下げることによって、「価値ある医療制度」を実現すると謳われている。しかしながら、現実は「質」に関して落ちてしまっていると病院長である講師は明言する。
 5年後にさらに出された「骨太の方針2006」では、医療費削減のために、医者を目指す国立大学の定員数を押さえ、10万人あたり3千人を2千人の医者の数にしていると具体的に話される。『改革なくして成長なし』とし、公立病院の民営化、民間委託、PFIの活用が進んできている。果たして、現場は、また、国民の生活は、それで落ち着いているだろうか。
 一方、CT・MRI機器は、日本では、ほとんどの医療現場で整備されてきていて、今では、世界一位だという。これらの機器を使うための設備投資に病院は資金がかかる。従って置いたからには、利用し、そして使ったならば、患者は診療報酬点数の高い医療費を払うことになり、医療費全体の負担も大きくなる。心臓カテーテルなどは、アメリカの3倍の費用がかかり、価格は、アメリカに独占されているとのこと。
 病院長である講師からは、どのような視点で、公立病院の経営を維持してきたかというと、薬を安く仕入れることを上げられた。私としては、このように医療機器や医薬品とのからみからくる診療報酬単価のからくりが見えないとこれらの問題の議論にならないと考える。
 私たちがどれだけの医療を求めるか。今は、体を透かして診ることが容易な時代。そして、生身に変わって、人工機器を使うこともできる。このことが「自分たちの医療」のあり方なのか。国民が求める医療のあり方が進まない限り、すべてが市場経済にゆだねられた医療が進むのみ。
 その中で、公立病院のあり方については、医療のセイフティネットとして存在しなければならないし、「本当に必要な医療」とは何かをもっと地域で考えることが必要だと認識した学習会でした。